会頭あいさつ

 

会頭あいさつ

 

会頭 酒谷 薫
(日本中医学会理事長、東京大学大学院特任教授)

第10回日本中医学会学術総会の開催準備を始めた頃には新型コロナウイルス感染症は未だ発生しておりませんでした。今年に入ってから新型コロナウイルス感染が世界的に拡大する傾向を見せ始め、4月には緊急事態宣言が発令されました。この頃より、大会組織委員会ではWEB方式による開催が議論されるようになりました。7月に入り新型コロナウイルス感染が再び急速な拡大傾向を示しはじめ、大会組織委員会と議論を重ねましたが、本大会はWEB方式の開催にすることにいたしました。

WEB方式では実技を伴うワークショップや企業展示などは制限を受けますが、自宅からでも手軽に参加でき、海外との交流も簡単にできるなどメリットも少なくありません。実際、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ICT(情報通信技術)を活用したテレワークやオンライン講義などが急速に普及しております。

本学術総会では、WEB開催のメリット生かして、次のプログラムを企画しました。まず、過去10年間の学術総会における講演の一部をWEB上で閲覧できるようにします。これまで主な講演をビデオで録画しアーカイブスにしておりましたが、これを参加者に公開することにいたしました。次に、シンポジウムテーマ “次世代中医学を目指して:我々は何をすべきなのか?”を企画しました。今年は日本中医学会が設立されて10年の節目になりますが、この10年間に中医学を取り巻く状況は大きく変化しました。医学、先端科学技術の発展、中国の経済発展、あるいはコロナウイルス問題による生活様式の変化など、私たちは10年前には想像できなかった激動の真っただ中にいます。このような状況の中で単に過去を踏襲するのでは、日本の中医学は衰退してしまうかもしれません。日本中医学会は次の10年間でどのような方向に進むべきか?これまでの学術総会で会頭を務めてこられた先生を中心にご意見を頂き、会員の皆様とともに議論しながら次の10年の日本中医学会の方向性を模索したいと思います。