路 京華(中国中医科学院広安門病院 客員教授)
2010年に当学会が設立して5年が経ちました。日本で中医学を志す人達の拠り所となっていると感じています。より一層学会が発展することを心から願っています。
私が当学会の勉強会「漢方応用講座」を任せていただいて、今年の2月で14回目となりました。毎回平馬先生を初め、熱心な先生方に出席していただき大変うれしく思います。勉強会では私が中医学を教わった、父・路志正の症例を、おのおの弁証してもらい彼の考えを深めながら解説をしています。
代々医師の家系に生まれた父は古くからの医学を直接学びました。現在統合されて作られた標準的な「中医学」の教科書に載っているものとは違うものです。それを真摯に突き進めた結果、臨床ですばらしい効果を発揮するようになり、今では老中医の一人として「首都国医名师」(日本の人間国宝に近いと思います)に選ばれるまでになっています。
私はその父から手解きを受け14歳から中医学を学ぶようになりました。その後現在の中医学の教育を受け日本と中国、両方での活動をするようになりました。
日本では主に中医学の講師として日本中医薬研究会や様々な講演会で中医学のすばらしさを広めてこられたのではと思います。
この度日本中医学会第5回総会の会頭をご指名いただきました。私が会頭になってお伝えしたいのは、私が経験してきた「伝統と継承」です。中国でまとめられた「中医学」の教科書はやはり膨大な中医学の知識の中の最大公約数、一片に過ぎません。標準的な勉強は非常に重要ですが、それを通り越した先には中国大陸のように広がる中医学の世界が待っています。その中で私が経験してきた父・路志正から受け継いだ中医学を皆さんにお伝えして、これからの中医学の発展に繋げていただきたいと思います。
そのために、今年の学会では路志正に来日してもらい、その診察や考え方、診察の雰囲気などを目の前で見ていただきたいと思っていましたが、なにぶん95歳と高齢であり、飛行機に乗る時の体調が心配なことから、来日は断念いたしました。
そこで、今年の学会では、皆さんの目の前で実際の患者さんの診察・治療の解説などを父・路志正の弟子にあたる先生方にしてもらい、その患者さんについて事前に路志正から聞いた治療の内容と照らし合わせることで路志正の実臨床に迫りたいと思います。
日本での中医学の発展はこれからだと思います。学会に参加された先生方が支える日本の中医学に、私達が学んできた伝統的な中医学を併せてすばらしいものに作り上げていってほしいと思います。
概要
[綜合テーマ] 中医学の継承と発展 |
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会 頭 | 路 京華 先生 |
会 期 | 2015年 9月12日(土) 13:00 ~ 17:30 9月13日(日) 9:30 ~ 16:00 懇親会:9月12日(土) 18:00 ~ 20:00 |
会 場 |
タワーホール船堀 |
プログラムの 主な内容 |
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参加費 |
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入金口座 |
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◆ 路志正先生プロフィール
1920年生まれ。幼少より『千家氏』『医学三字経』などを学び、小学校高学年から叔父に中医学を学ぶ。南董(河北省城市)の紅万字分会施診所で臨床実習。1938年医師資格を取得。1951年から実地の診療活動に従事。北京中医進修学校修了後、1952年から衛生部中医司技術指導科に勤務、現在に至る。長年にわたる臨床経験を有し、『証論治学』『中医湿病証治学』『路志正医林集腋』『実用中医風湿病学』を著した。心臓病における脾胃の関わりを考察した研究成果は中国国家科学技術進歩賞を獲得。2008年中国の中医学「無形文化遺産」の代表者に指定された。早くから中西医結合に携わり、西洋医学と現代科学を視野に入れた研究にも携わる。2010年第1期国医大師*に選出される。
*国医大師:
中国政府により認められた国家レベルの中医師へ与えられる称号。人力資源和社会保障部・衛生部・国家中医薬管理局の3機関から組織された選出委員会により全国から選定され、省レベルの労働規範・先進工作者の待遇を受ける。主な選定条件は、強い責任感と使命感をもって中医薬事業の発展に突出した貢献をしていること、独特な学術思想あるいは経験をもち、全国的に大きな影響を与えていること、無私の精神で学術継承を行い、積極的に後進を育てていることなど。また、医術への造詣が深いことはもちろん、さらに医徳(医者としての品徳)を備えていることや、名医と呼ばれるにふさわしい豊富な臨床経験をもつことと、それを裏付けるための55年以上の工作経験が求められる。