日本中医薬学会

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週刊「中国からの留学生便り<崔衣林>」第一話(3)を掲載

2018.10.27 カテゴリー:中国からの留学生便り

第一話 中医薬大学留学の第一歩(3)

北京中医薬大学博士課程 崔衣林


 中国語が少しわかってきた頃、午後の空いている時間を使って附属病院へ実習に行きました。行くや否や、衝撃なことが発覚しました。現地の方と全くコミュニケーションが取れないのです。少し自信がついてきた私の中国語が全く通じないし、現地の方が話す言葉を聞き取ることもできません。普段中国語の先生とは中国語でこんなにコミュニケーションが取れて冗談も話せるのに、なぜわからないのか理解できませんでした。次の日、早速中国語の授業で先生に尋ねました。中国語で昨日病院であったことを告げると、先生も中国語で答えてくれました。それは天津の「方言」があるからでした。言葉自体が変わってしまう上海や他の地方と違い、天津の方言は標準語と近いですが声調が異なります。当時の感覚だと優しく聞こえるのが標準語、怒っているようで舌巻いて話すのが天津語でした。一緒に実習している大学生たちは非常にわかりやすい標準語で話してくれました。中国の学校では小さい頃から綺麗な標準語を話すよう教育されており、標準語テスト(普通话考试)なども実施されております。したがって、話し方で学歴や教育レベルも判断することができます。

 病院実習での衝撃は言葉の違いだけではありませんでした。初めての実習は天津中医薬大学第一附属病院鍼灸科の張伯儒先生のもとで勉強させていただきました。本場の中国鍼はとても太く、何より先生の手が非常に速いです。日本で学んだ際は、まずはツボを手で探す、局部の消毒、前揉法、押し手、片手挿管、鍼管を立ててトントントンっと刺入、手技を加えながら得気を得るのがスタンダード。しかし、張先生はツボの消毒後、一瞬のうちに鍼が刺さり、と同時に得気を得ていました。ちょっと時計を見たり、目を離せばそのうちに鍼は山のように刺さっている速さです。そして患者さんの数も日本と比べものになりません。日本では完全予約制で一人1時間。一日多くても20人くらいです。しかし、張先生のところでは一日に100人、多い時では120人の患者さんが来院されます。患者さんたちは治療を受けるため、朝3~4時に病院へやってきて並んでいます。6時になると病院の前では屋台が並び、診療室の前では朝ご飯で賑わいます。特に天津の朝ご飯は中国国内でも独特で、煎饼果子※1、馒头※2、大饼鸡蛋※3、豆腐脳※4、それに豆乳などがあります。

※1煎饼果子: 薄いクレープ生地のようなものに生卵を塗って、特性の丸い鉄板で焼いた後、ソースをつけて油揚げを入れたもの。朝だけでなく、夕食後のおやつとしても食べるくらいポピュラーな食べ物です。中に入れる油揚げは果子と果片儿を選ぶことができ、果子とは長細い揚げパンのようなもので、果片儿とは平たい揚げ物である。
※2馒头: 蒸しパンであるが、日本人が想像する蒸しパンとは程遠い。具もなく、味もない。パサパサしており、私は中国人のようにあんな大きな馒头をがっつり食べれないが、豆乳につけて食べるとおいしい。
※3大饼鸡蛋: 焼きパンのようなものに卵焼きやザーサイ、ジャガイモ、レタス、わかめなどを巻いたもの。トッピング可能でトンカツやチャーシュー、ソーセージ、さらに卵焼きダブルなどがある。
※4豆腐脳: 茶碗蒸しに似た豆腐版

 7時45分になると張先生が出勤されます。私たちはその前に病院へ向かい、事前準備を行います。午前中だけで60人の患者さんが来られ、午前の診療は13時半まで続きます。午後の診療は14時半から始まり、40~60人くらいで、終わるのは18時半頃になります。それから張先生は講義をしてくれます。講義では中医学、西洋医学など専門用語が入りほとんど聞き取れませんでしたが、幸い漢字がわかるので学生たちがノートを見せてくれ、なんとか理解することができました。


第一話(4)>へつづく

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