第一話 中医薬大学留学の第一歩(1)
北京中医薬大学博士課程 崔衣林
この度、「留学生便り」に投稿させていただくことになりました、北京中医薬大学博士課程の崔衣林と申します。現在は燕京劉氏傷寒流派の創始者、劉渡舟教授の直弟子である傅延齢教授に師事しております。傅教授は特に中薬の用量について研究されており、私は日本の漢方薬用量の調査をしております。
数年前より中国全土の中医薬大学日本人会を立ち上げ、SNSグループ上で中医や就職、学会に関する情報交換や現状報告、新入生がある地域に行けば現地でサポートするなどの活動を行っております。そして中国国内旅行をする際も現地の日本人留学生と連絡を取り、現地案内をしたりしております。
中国の国土は非常に広く、地域によって文化や風習も変わってきます。もちろん中医の流派や治療法も異なってきます。今回より投稿していく「留学生便り」では、中国全土の日本人留学生たちから現地の中医事情や留学生活、生活環境、特殊な文化についてご紹介してもらいたいと思います。この「留学生便り」を通して、一人でも多くの方に現地の留学生がどのように学んでいるか、どんな生活をしているか、現地の中医学がどんなものなのかを知っていただければ思います。
私は中国に来て8年になりました。8年と聞けば長い気がしますが、中医を専攻する周りの方々は中国歴10年、15年と長期の方がたくさんいます。8年前、中国留学を考えていた当初、まさか8年もいるとは思いもしませんでした。
8年前、私は日本鍼灸師の免許を取得し、鍼灸院や接骨院、漢方薬局での業務経験もあり、そのまま継続して働き開業するか、それとも中医の本場である中国へ留学するか迷っておりました。今後、日本人向けの治療をするなら日本に残って修行した方が開業までの道のりが早いのではないか?人生の分かれ道でいろんな先生に相談させていただいたのですが、師匠である中国の先生や母校である神戸東洋医療学院をはじめ、多くの方から本場を学ぶことはとても大事である、こんなチャンスは後にないかも知れないと留学を勧められました。私自身も一生続けていく中医の本場を一度は見ておくべきと思い、1年間の留学を決心しました。神戸東洋医療学院と天津中医薬大学は提携しており、その連携カリキュラムがあったものの、留学は初めてで、何の手続きをすれば良いのか、何を持っていけば良いのかわかりませんでした。その頃、2年先に天津へ留学しておられた神戸の先輩である平野さんから非常に丁寧にアドバイスをいただきました。その際いただいた言葉が今でも印象的です。「こっちは全部準備できてるから何もいらんで。みんないい人ばかりで助けてくれるから、挨拶代わりに日本のお菓子あげたら、みんな喜ぶわ!」そんな先輩のアドバイスをもとにスーツケースにお菓子をいっぱいに詰め、日本で使っていた中医の教科書を数冊だけを持ち、いざ渡航しました。
<第一話(2)>へつづく