日本中医学会

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週刊「中国からの留学生便り<玉川清美>」を掲載

2019.04.06 カテゴリー:中国からの留学生便り

春の養生方法について

遼寧中医薬大学日本人会会長 玉川清美


 はじめまして、遼寧中医薬大学日本人会会長の玉川清美です。3月下旬に雪が降った遼寧は中国の北側にあります。そんな遼寧にも、いよいよ春が来ました。今回は春の養生についてご紹介させていただきたいと思います。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。「春」という季節は、中医学の古典では「一日の始まりは朝にあり、一年の始まりは春にある。」と言われるように、養生をはじめるのに最もふさわしい季節です。春の養生において重要なのは「肝」を保護することです。

 中医学理論で「肝」は昇散と疏泄の特性があるため、人体の気血の運行や感情コントロールを支配し、また脾胃の消化機能もコントロールしています。「肝」は五行では「木」に属し、易学理論では「屯」の卦に属します。上は坎水、下は震木である「屯」の卦は、万物の始まりで、水が清く樹木が生い茂っている意味を持ちます。天人相応の観点では、中医学の「肝」と「春」は共通しているところがたくさんあります。例えば、「春」に万物が生まれ、「冬」に儲蓄されます。同じように「肝」には昇散疏泄する働きと、肝血と腎精を儲蓄する働きがあります。そして、「肝」は舒達の特性を持つように、「春」には草木が芽を出します。また、肝気は「春」に最も旺盛で反応が強く、肝の病も春に起きやすくなります。「春」の養生法はたくさんありますが、ポイントは「肝」の生理特性に従うことと、厥陰肝経の経絡を通暢させる2つです。

一、睡眠による「肝」の養生法

 寝ているとき、血液は「肝」に帰ります。つまり、睡眠時に血液が「肝」を滋養することで、「肝」は蔵血と生血の機能を発揮できるのです。特に十二時辰の丑時に相応する深夜1-3時の睡眠は非常に大切です。また、朝早起きすることで、肝気の昇発作用を助けます。それゆえに、古典では「春季夜臥早起」と言われます。そして、髪の長い方はなるべく髪を結わないで下ろすようにし、よく梳いて、外で散歩などを楽しみ、草木を見て目の疲労を和らげることで肝経が疏通されるのです。

二、飲食による「肝」の養生法

 「春」は、秋冬のような味の濃い食べ物ではなく、たけのこ、春菊、もやしなど旬のものを食べます。春の旬のものには成長させる特性があり、肝気を疏通させます。また「春」は酸味を控え、甘味を多く用います。それは肝気が旺盛な時期に肝気を増強させる酸味を用いることで「肝木克脾土」となり胃腸を傷つけてしまうからです。したがって、「春」にはトマトやレモンなど酸味のものは控え、山薬や大棗、大豆など甘味のものを用いることで「肝」の過剰な亢進を防ぎ胃腸を保護してくれます。その他にも、中医学の「滋水涵木」という方法で「肝」を保護します。「滋水涵木」とは、腎精を補養することで、肝が滋補されるという意味で、肝腎陰虚の中高年の方は六味地黄丸を服用することで、陰虚風動による中風の予防につながります。

三、情志のコントロールによる「肝」の養生法

 「春」は肝気昇散の季節であるため、過度に昇発すると、情緒不安になったり怒りやすくなったりします。中医学的に説明すると、怒ると気が過剰に上がり、下がらず気機の昇降失常するため、過度の「怒り」は肝を傷つけるのです。したがって、「春」は心持ちが大事なのです。気功養生法で「春嘘名目木扶肝」というのがあり、「肝」の濁気は排出し、機能を調整します。その他にも「肝」の竅は目であるため、両目を大きく開くことによって疏肝明目の効果があります。

 「肝」の養生法を実践することで、髪の柔軟性、目の調子、消化機能、生理周期など身体のいろんなところで效果を実感できます。このような「肝」の養生法を通して、五臓調和、気血調暢、四季安康させ、健康で楽しい「春」を過ごしましょう!


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