日本中医薬学会

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「中国からの留学生便り<柳井杜莎>」腎虚痰瘀型PCOSの臨床研究

2019.10.31 カテゴリー:中国からの留学生便り

北京中医薬大学卒業生・北京心和堂 柳井杜莎


 北京中医薬大学修士課程を卒業し、現在、北京心和堂にて勤めております中医師の柳井杜莎と申します。婦人科を専門としております私の研究である《肖承悰教授式 腎虚痰瘀型PCOSの臨床研究》について簡単にご紹介させていただきます。

 腎虚痰瘀型の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovarian syndrome)は臨床上でよく見られます。病機の本は腎虚、標は痰瘀、病性は虚実挟雑です。今回の研究では、治療前後で全身症状、血清中の性ホルモン、エコーによる卵巣の大きさを測定し判定したところ、治療有効率が95.31%でした。以下、研究の詳細です。

 北京東直門病院婦人科問診部にて腎虚痰瘀型の多嚢胞性卵巣症候群64例を対象に研究を行いました。年齢は20歳~40歳。月経周期3サイクル中薬治療を行い、治療前後で比較しました。指標はニキビ、黒色表皮腫、多毛、BMI、卵巣の大きさ、血清中の性ホルモン(LH、FSH、T、E2、P、PRL)です。研究に用いた中薬は、補腎活血化瘀を主とする桑寄生、続断、巴戟天、女貞子、菟絲子、覆盆子、香附、澤蘭、茯苓、白朮、法半夏などで、患者さんに応じて随証加減しました。上記の中薬を煎じ、一日一剤、朝晩分服し、毎回200ml服用しました。月経期も服用させ、月経周期3サイクル継続させました。結果、64例中、全治癒が22例(34.38%)、顕著に有効が11例(17.19%)、有効が28例(43.75%)、無効が3例(4.69%)でした。全体の有効率は95.31%です。全ての指標においてP<0.05と統計学的に有意となりました。

 今回は、補腎活血化痰法を用いて腎虚痰瘀型の多嚢胞性卵巣症候群の治療を行いました。処方中の桑寄生・続断・巴戟天は温補腎気腎陽、菟絲子・覆盆子は益腎固精、女貞子は補腎滋肝、茯苓・白朮は健脾利湿・補気安胎、茯苓・法半夏は祛湿化痰、香附・澤蘭は活血理気調経し、諸薬を合わせることで腎の全てを補い、痰湿や血瘀を除去し、治療効果を得ることができました。したがって、補腎活血化瘀法を用いた腎虚痰瘀型の多嚢胞性卵巣症候群の治療は非常に有効と証明できました。

 多嚢胞性卵巣症候群は日本でも多く見られる疾患ですので、今後日本での臨床に役立てられればと思います。

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