日本中医薬学会

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週刊「中国からの留学生便り<黒澤汪>」第一話を掲載

2018.12.08 カテゴリー:中国からの留学生便り

第一話 日本と中国とタイの中医学の架け橋となりたい

天津中医薬大学日本人会会長 黒澤汪


 初めまして、天津中医薬大学日本人会会長、大学5年生鍼灸推拿科を専攻しております黒澤汪と申します。聞きなれない名前と、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、私は日本とタイのハーフです。タイで生まれ、18歳まで栃木県で育ち、現在は中国天津に留学しており、将来はタイへ戻る予定です。現在は卒業実習で附属病院の各科を回りながら、来年受験予定のタイ中医師国家試験準備をしております。

 現在、天津中医薬大学日本人留学生は私を含め4名が在籍しております。5年前、私が来た当初は20名いたのですが現在は激減しました。その前はもっと多かったと聞いています。日本人留学生激減の背景には、日本での中医学の流行盛衰や中国の大気汚染などの環境問題が多く関係してると言えるでしょう。日本人会をしても人が少ないので、寂しく感じます。2018年6月に大学は新校舎へと引っ越しし、大変大きく、キレイになりました。都心部と離れ、周りには何もないので困っていますが、それだけに勉強に集中できています。数年前ひどかった大気汚染も現在では改善され、日本と変わらないくらいです。

 天津中医薬大学の特徴は脳卒中の鍼灸治療法である《醒脳開窮法》が有名です。天津の《醒脳開窮法》含め鍼灸は中国で一番有名なため、日本人留学生には、医師や薬剤師よりも鍼灸師が多いです。

 最近は病院実習に追われる毎日です。病院では指導医師のもと、患者さんの治療を行います。実習を始めてまもない頃は、見た目が若い、大学を卒業していないなどを理由に治療を断られることが幾度とあり、その度に自信を無くしていました。しかし、ある患者さんがきっかけでそれもなくなり、今では十数人の患者さんの治療を任されるようになりました。

 その転機となった患者さんは頚椎症があり、月に数回通院して治療を受けていましたが、ある日寝違えて泣きながら病院に来られました。しかし、残念ながらその日は彼女の治療を担当していた先生がおらず、治療を受けられないでいました。そこで私に白羽の矢が立ちました。私はまず患者さんから中医の四診(望、聞、問、切)で情報を集め、証と治療法を決めました。証は寒凝血瘀、治療法には刮痧(かっさ)と放血を採用しました。治療を施した後すぐに治療効果が現れ、患者さんからは「先生、ありがとう!首の痛みがなくなって、動けるようになりました!」と笑顔で感謝されました。この時、中医学を学んで良かったと実感し、その後の自信にも繋がりました。それだけでなく、その患者さんは、この若い先生も悪くないよと他の患者さんに紹介してくれ、今では多くの患者さんを担当することができるようになりました。今後も多くのことを学び、より多くの患者さんの役に立ちたいと思います。


第二話>へつづく

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