日本中医学会

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週刊「中国からの留学生便り<脱サラ留学生>」第三話を掲載

2019.02.16 カテゴリー:中国からの留学生便り

第三話 中国で医者を目指していたら役者になった

某都市インターン生 脱サラ留学生


 あ・・・ありのまま起こった事を話すぜ!おれは中国で医者を目指していたら、いつのまにか役者になっていた。何をいっているかわからねーと思うが、おれもどうしてなのかわからなかった。頭がどうにかなりそうだった。恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・。

 というわけで、今回は中国で役者をやったお話です。

 中国では本当にたくさんのドラマや映画の制作が行われています。様々なものが制作されていて、なかでも第二次世界大戦前後を舞台にしたものはひとつの大ジャンルとなっています。時代背景上日本軍が登場することが多く、「リアリティを出すために日本人を登用したい」という場合に中国在住の日本人に声がかかります。

 かつてこういった作品に登場する日本軍像は日本人にとって愉快なものではありませんでした。エロくて下品で卑屈で暴力的。中国人主人公たちに手刀で八つ裂きにされる(北斗の拳みたいに)、銃撃戦で物陰に隠れていたら、空中で軌道が曲がる銃弾に頭を打ちぬかれるなど、散々な扱いでした。こういった「抗日神ドラマ」の過剰演出は、その後中国政府の方針でブレーキがかけられるようになりました。ちょっとやりすぎだよ、と。中国の人たちも「さすがにな」と思っていたようですね。

 僕が初めて参加したのは、香港占領についてイギリス軍と協議する日本側代表の大佐という配役でした。結構な大役ですよ!会議室に座って不機嫌そうに「こちらからの(事前取り決め以外の)要求はない」というだけだったけど。

 僕はこれまで何度か撮影に参加していますが、いまのところ侮辱的な配役を担当したことはありません。とはいえやっぱり軍人役が多いのですが、他にはIT会社のCTO、金融会社社員、調理器具メーカーのユーザー、車メーカー社員。さらに外科医、入院患者なんてのもやりました。いろいろやったもんだなぁ。

 一般的にどのように役者が選ばれるのか、その経緯は様々です。「脚本上想定する年齢の日本人なら誰でもOK」という場合もありますし、しっかりとオーディションなどを経て選出に至るケースもあります。あとは役者仲間や配役エージェント(そういう仕事があるのです)とのネットワークで仕事にたどりつくこともあります。ちなみに最も需要が多いであろう日本軍人役に選ばれやすいのは、人相が悪い(僕みたいなケース)、ある程度がっしりした体形であること。また立派な髭がある中年男性は軍幹部として見栄えがするので重宝されます。

 撮影の現場はとても熱気にあふれています。スタッフはみな忙しそうに走り回り、自分の仕事に熱心に取り組んでいます。監督の「アクショーン!」といういかにもなかけ声にもテンション上がりまくりです。たくさんの人たちと一緒に何かを作り上げる作業は本当に楽しいですね。

 ただスタッフたちは熱心ではありますが、繊細ではない一面も。たいていの現場で僕ら外国人役者は丁重なもてなしを受けます。しかしいざ撮影に臨まんと脚本や演出についての説明が、あいまいというか雑というか。こっちだって素人なんだからよー、指示や指導を細かくやってくんねーとわかんねーんだよなー。・・・あ、いや、言い換えましょう。現場の雰囲気に応じて臨機応変に対応する、インスピレーションを重要とする高度な現場なんです!!ほら、カメラ回してみないとわかんないこともあるじゃないすか。

 そんなわけで11月真冬深夜の川に浸かって撮影するシーンをああでもないこうでもないと3日間にわたって何度も川を出たり入ったりする羽目になったり(奇跡的に風邪をひかなかった)、なんとか戦隊で爆破シーンを撮りそうな真夏の山中で撮影してたら「どうも違うなぁ、ねぇADの君、ちょっと服借りてやってみて」っつって、衣装を脱がされてパンツ一丁で放り出されたり。一方ですんごい端役のはずで参加したら「君いいねぇ!」と監督にいわれて脚本が追加されて10日間くらい撮影し、挙句に最後はヒロインにマシンガンで蜂の巣にされるというおいしい役に変化した・・・なんてこともありました。

 何度か参加していると、著名な役者と共演することもあります。あるとき中国で長く活動されているという日本人役者の方と共演する機会がありました。彼の横で笑顔満点のマネジャーさんが紹介してくれました。「こちらは中国ですごく有名な〇〇さんです!もちろんご存知ですよね!」、えーそんなすごい紹介の仕方するの!?いやぁでも知らないですよ!アッハッハ!・・・なんていえず、ただ無難に自己紹介をして返したのでした(ネットで調べたら実際有名な人のようだった)。中国人の著名役者たちとも共演しますが、あいにく僕は中国芸能界にうといので特に感動はありません(くわしい奥さんは「うそ!」とのたうち回った)。日中合作の場合は、日本で著名な方も来ましたよ、たとえば、えへん、オダギリジョ〇とか。

 現場で一緒になる日本人には、僕のように本職を別に持っているパートタイム役者ばかりではなく、「中国の演劇学校を卒業しました」という人にもよく出会います。中国にきて学ぶのは中医学だけではないんですね。カメラや監督を目指して活動される方も本当にたくさんいます。そういった方たちと撮影合間の空き時間におしゃべりをすることも刺激的です。いろんな人たちが中国に目標や夢をもってやってきて、一生懸命頑張っているんですね。気が引き締まります。


第三話 了

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