日本中医薬学会

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第1回学術総会 2011年 レポート

2011.09.15 カテゴリー:過去の学術総会

【動画】

第1回学術総会 平馬直樹会頭講演の動画

【第1回日本中医学会学術総会が盛大に開催されました】

9月3,4日の両日,東京船堀で,第1回日本中医学会の学術総会が無事開催されました。昨年8月の日本中医学会設立シンポジウムに継ぐ,本学会の最初の学術総会です。台風12号が上陸するという不運もありましたが,全国から大勢の方々が参加されて大いに盛り上がりました。内容は想像以上にレベルの高い講演と発表が続き,参加者たちはいちように深い感銘を受けていました。
今回は,中国,韓国,台湾からもたくさんの代表が参加され,それぞれ充実した講演を聴かせていただきました。過去1年間,本学会は短い期間にもかかわらず,頻繁に海外との学術交流を続けてきました。そのおかげで,これらの地域の人々との間に親密な関係が育ち,本学術総会においても大勢の方々が参加してくださって,国際色豊かな総会を迎えることができました。
講演では,韓国の金英信先生が韓国における伝統医学の現状を報告し,台湾の陳志芳先生が台湾の中医学の転変の歴史と現状を詳しく紹介されました。中国の趙吉平女史は,弁証論治をめぐる中国針灸における最近の論調の変化とそれに応じた新しい展開について詳細な講演をされました。これは中医針灸を追求している日本の鍼灸師にとって,たいへん有意義かつ今後の活動に大きな示唆を与える重要な内容だったと思います。同女史の講演原稿はよく読んで,学会としても議論をしてゆくとよいのではないでしょうか。
平馬直樹会長の会頭講演「中医学の継承」は圧巻の内容でした。我々が受け継ぐ中医学とはどのような医学なのか,素問,傷寒論など中医学の古典ルーツをたどり,徐霊胎の影響を受けて始まった日本古方派医学の成り立ちから尾台榕堂の症例,そして平馬先生が北京留学のなかで老中医たちから学んだ中医学の遺産,このバトンを日本がいかに引き継ぎ,世界に広げてゆくのか,本学会の使命にまで言及した心に沁みる深い内容です。全学会員が読むべき基本文献に指定してよい講演だと思いました。
シンポジウムは4テーマあり、本学術総会の核となるものです。①「心の疾患と中医学」②「中医学で難病に挑む」③「中医学の科学的エビデンスを得るために:非侵襲的光計測の役割」④「生薬の資源保存と安全性確保」とたいへん盛りだくさんでした。それぞれ非常に魅力的な内容です。 シンポジウム②では,4人の演者が難病症例を中医学でみごとに治療した経験が紹介されました。中医学の治療能力の高さに驚くとともに,中医学への信頼感をより深めさせてくれる感動的なシンポジウムでした。
シンポジウム③「中医学の科学的エビデンスを得るために」は,光計測によって非侵襲的に計測できる最先端の計測方法が紹介されました。第1題は,筋硬度を定量化する計器によってマッサージ前後の筋肉の緊張度を計測する方法です。第2題は,光脳機能イメージングによってアレルギー治療薬の薬理効果を近赤外線分光法によって計測するものです。第3題は,赤外線計測によって人間の心理状態を計測する方法です。これまで計測の方法がないとされていた分野においても,この光計測によって計測が可能になるという驚くべき方法が紹介されました。このような最先端の科学者たちが毎回当学会に参加して,最新の業績を紹介してくださっていることは,臨床家にとって誠にありがたいことです。経穴・経絡・配穴・手技の違いによる効果の違い,生薬・処方の効能効果,中医病態の分析,証と配薬の関係,病因と病機,治法の意味,中医治療の効果判定など弁証論治に関わる様々な事柄を検証し解明されるなら,これまで概念だけで進めてきた弁証論治の実践に裏付けを得ることになります。もちろんその逆もありうることですが,物事が明確になっていくことは素晴らしいことです。科学者たちと臨床家が同じテーブルについて意見交換を行ってゆけば,きっと素晴らしい展望が拓けてくるものと思います。
④は,栃本天海堂と株式会社ツムラさんの生薬資源の保存と安全確保に努力されている専門家の方が,生薬資源をめぐる現状と問題点を詳細に紹介してくださり,問題の深刻さを十分に認識させてくださいました。
鍼灸セミナー「中医鍼灸のさまざまな手技」では,日本の鍼灸界が数十年かけて受容してきた「三通法」「醒脳開竅法」「李家家伝鍼灸」という代表的な鍼法の特徴をわかりやすく概説したうえで,それぞれの手技を実際に披露されました。若い人々にとっては大いに刺激を受ける有意義なセミナーでした。 それぞれの発表は非常にレベルが高く,感動的な内容です。当学会の最初の学術総会がこのように素晴らしい内容でスタートを切れたことに,誇りを覚えるとともに,これからの学会の成長に明るい確信を得ることができました。
昨年の設立シンポジウムには350名の方々が参加されました。今年はそれより多くの参加者があるものと予想して,700名の会場を確保しましたが,今年の結果は,東北大震災の影響や台風12号が上陸するという悪条件と,事務局の不慣れが重なり,十分な広報活動ができず,告知が行き届きませんでした。参加者も昨年を若干下回ってしまいました。来年は,今年の反省のうえにたって,しっかりと準備をし,さらに大きな成功を勝ち取りたいと考えています。皆様のご協力をお願いいたします。
来年は,2012年9月1日(土),2日(日)に同じ会場「タワーホール船堀」で開催されます。会頭は東北大学の関隆志先生です。ぜひ大勢の方々にご参加いただきたいと存じます。

日本中医学会顧問・広報担当 山本勝司

【写真】

第1回学術総会の写真をお楽しみください。

会場の「タワーホール船堀」

 

会場風景

会場の「タワーホール船堀」

 

会場風景

会場風景

 

本学術総会会頭の平馬直樹氏

会場風景

 

本学術総会会頭の平馬直樹氏

本学会理事長の酒谷薫氏

 

中国北京中医薬大学東直門病院の趙吉平女史

本学会理事長の酒谷薫氏

 

中国北京中医薬大学東直門病院の趙吉平女史

韓国・ソウル慶煕金英信韓医院の金英信氏

 

台北市中医師会理事長の陳志芳氏

韓国・ソウル慶煕金英信韓医院の金英信氏

 

台北市中医師会理事長の陳志芳氏

台北市中医師会の代表たち

 

針灸実演風景

台北市中医師会の代表たち

 

針灸実演風景

シンポジウム風景

 

次期会頭,東北大学の関隆志氏

シンポジウム風景

 

次期会頭,東北大学の関隆志氏

 

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